※こちらの展覧会は終了しました。
洋画家・藤森兼明(1935-)の真骨頂ともいえる、現代女性の肖像と、中世キリスト教美術を対峙させた祈りの世界。藤森は長きに渡り、ビザンチン時代の聖堂内を覆うモザイクやフレスコによるイコン壁画を創造の源泉として制作を続けてきました。その藤森の作品に、2017年、彩色写本というテーマが加わり、鮮やかな色彩と金で荘厳されたラテン文字を際立たせた新たな境地を生み出しました。
藤森兼明が魅了され、その近作を華やかに彩る彩色写本。本展は、中世彩色写本とそれをテーマとした藤森作品を一堂に会し、時代と国を越えた美の共演をお楽しみいただきます。最大の見所は、古川美術館の秘宝、華麗なる彩飾写本『ブシコー派の画家の時禱書』(1412年頃)と、それに取材した藤森兼明の2020年新作「アドレーション オブ マギ」(初公開)です。『ブシコー派の画家の時禱書』は、ブシコー派の写本工房による世界でわずか数冊となる完本の一つであり、写本技術の最盛期を物語る世界的な貴重書です。ブシコー派は、『ベリー公のいとも豪華なる時禱書』を作成したランブール兄弟と同時代15世紀初頭の最も独創的で洗練された芸術家です。3年ぶりの特別公開『ブシコー派の画家の時禱書』と、その美に触発された藤森の新作、600年の時を越えた美の交流とその輝きをご堪能ください。
また、手間暇をいとわず壮麗な挿絵や装飾を施した中世彩色写本の制作方法や、中世写本の材料となった牛皮紙・羊皮紙の魅力もあわせてご紹介します。
燦然とした悠久の輝きを放つ藤森作品は、彩飾写本と同様に祈りの美の結晶ともいえます。現代へと受け継がれてきた中世写本の美、そして、未来に受け継がれる藤森兼明の清雅なる祈りの世界をご堪能いただければ幸いです。
また、古川美術館所蔵のファクシミリ版写本コレクションも展覧します。初期キリスト教芸術の傑作『ケルズの書』、最も豪華な装飾写本『ベリー候のいとも豪華なる時禱書』、羊皮紙を黒く染めた『黒い祈禱書』など、世界に一冊しかない貴重な写本を、精巧な技術によって再現したレプリカ(ファクシミリ版)でお楽しみください。
『ブシコー派の画家の時禱書』ページ替え情報
*10/24(土)-11/15(日)「マギの礼拝」
*11/17(火)-12/3(木)「羊飼いへのお告げ」
*12/4(金)-12/20(日)「受胎告知」